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銀の笛
蛇の頭は直径1メートル程もあり、その大きな口から伸びている舌は男の腕ほども太く長く、先端の二つに分かれている部分だけで30㎝もあった。その二つの突端は真っ赤な触手のように妖しくうごめき、美女の豊満な胸にまとわりついた。美女は無表情のまま大蛇の片方の舌先を口に入れ、音を立ててジュルルルと吸って見せた。
もう片方の舌先は美女の体を撫でまわしていたが、次第に太く硬くなっていくのがわかった。観客はそれぞれに期待と不安と興奮とで固唾をのんで見守っている。
と、その時、蛇使いの男は胸の内側から銀色に光る横笛を取り出した。
♫ホゥーホゥーブォーーー
その笛はフルートに似た美しい音を響かせた。蛇使いの奏でる静かなメロディーは哀愁を帯び、美女の数奇な運命を想わせた。毎日、こんな不気味な蛇使いや大蛇と奇怪なショーを繰り広げながら生活している彼女の憂いを、祥太は想像した。
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