悪女、世にはばかる

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悪女、世にはばかる

 数ある内の一つの世界にて、今まさにとある王国が敵国へ攻め込もうとしていました。 「王様、ここを落とせば世界統一に大きく近づきますね」 「おお、長い戦いも終結へ向かい始めている。ここが勝負所だ」  王様は総攻撃の開始前に、行軍を続け疲弊した兵士達へ声をかけ士気を高めようとしていました。 「あと一踏ん張りだ。よろしく頼むぞ」 「「はいっ!」」  そして一息ついた頃、王様の元へ同盟国であるルルシア王国より一人の使者がやってきました。 「こちら、ルルシアの姫より手紙を授かって参りました」 「ふむ」  王様が手紙を広げると、そこにはこんな文面が。 『はろー! 突然で悪いけどイケメンでナイスガイな王様にお願いがあるの。どうも隣国が私の国を攻撃しようとしてるみたいなんだけど、援軍を送って頂けないかしら。もし送ってくれたら……い・い・コ・ト……してあげるかも?』 「早急にルルシアへ援軍を送れ!」  「え? しかし王様、これから激戦が予想されるのに兵を減らして大丈夫なのですか?」 「一万程度なら構わん! 送れ! すぐ送れ!」 「し、承知いたしました」  王様は総兵力の四分の一を援軍へ送りました。本当に大丈夫なのでしょうか。 「兵が減ったから陣形を調整しないとな」  王様はダウンした戦力をカバーすべく、陣形や戦術の再確認を始めました。  そしてようやく落ち着いたかというところで、またもやルルシアの使者がやってきました。 「度々お手を煩わせてしまい申し訳ありません。こちら、新たにルルシア姫より授かった手紙でございます」 「ふむ」 『何度もごめんなさい王様、迷惑ですわよね……』「そんなことないよマイプリンセス」「王様?」 『どうやら隣国の他にも漁夫の利を得ようとしている国があるようで……更なる援軍を送って頂けないかしら。お礼はきちんといたします。……体で』 「何をボーッとしてる早く援軍を送れ! 早く! えーい、もういい私が直々に行く!」 「ちょっ、王様! ダメです、王様がいなくなったら誰が指揮を執るんですか!」 「ルルシア姫! オーマイルルシア姫! 待ってろオジサンすぐ行くからね!」 「駄目だこいつ正念場でポンコツになりやがった!」  部下たちが王様を必死で食い止めていると、そこにもう一通手紙が。 『もし全兵力を送ってくれたら……ああもう、これ以上は恥ずかしくて言えません(火照り)』 「総員方向転換んん!! ルルシア国へ向かああう!」 「はああ!? いやここ勝負所なんじゃないの? あんた王様のくせにここまで来て女に揺らぐってのか!」  王様は部下の辛辣な言葉を気にもとめず、全軍をルルシア国へ向かわせました。  ◇  ルルシア国へ到着した王様は、城でルルシア姫と対面していました。 「王様! 無理を言って本当に申し訳ありません……」 「いえいえルルシア姫。あなたのためならたとえ火の中水の中、どこであろうと私はすぐに馳せ参じますとも」 「まあ頼もしい。……ふふっ、ではそろそろお礼をさせて頂こうかしら」  ルルシア姫のウィンクに、王様は完全に心を奪われていました。 「でもここでは恥ずかしいから……地下の秘密部屋に行きましょう。案内人をつけますので先に行っててくださる?」 「うっほーい」  もはやエロ猿と化した王様の目は、大きなハートマークが浮かんでいるかのように見えます。  地下室へ案内された王様は、ルルシア姫を今か今かとベッドの上で正座して待ちわびていました。 「姫はまだかな~」  しかし、姫はいつまで待っても来ません。一日。二日。三日。どんどん時が過ぎて行っても、姫が来る様子はない。  不審に思った王様はようやくベッドから降りて外へ出ました。  ◇ 「国が……落とされた……?」  城内の者から自分の国が落とされたことを知った王様。  ルルシア姫は援軍としてやってきた兵士達を色香に惑わせ、王様の国へと攻め込ませたのでした。 「ごめんなさ~い王様。私ってイタズラっ子だから。大丈夫、王様もすぐみんなの所へ行かせてあげる」 「き、貴様……! 騙したな!」  不敵な笑みを浮かべたルルシア姫が整った顔立ちの男性騎士へ何か耳打ちをすると、騎士は剣を抜きながら王様の元へ近づき、頭上から一閃。  こうして、一つの国が滅んだのでした。
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