先輩はどきどきカワウソになる!?

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「隣の研究室っていうと、先生は?」 「徳井教授だな」  その答えに、ああ、あの先生かと美織はかつて量子力学の講義をしていた徳井卓哉の顔を思い浮かべた。それほど喋ったことはないが、話し掛けにくいタイプではなかったはずだ。何とかなりそう。 「じゃあ、二人に話を聞いてみます。本人は気付かなくても、客観的に見ている人は何か気付いているかもしれないですから」 「ああ、頼む」  史晴に頼むと言われ、一気にテンションの上がる美織だった。 「え?学部生時代の占部のことを教えて欲しい。いいけど?」  で、研究室にて早速裕和を捕まえると、怪訝な顔をして美織と史晴を見比べた。そう、なぜか史晴も聞き取りに同行すると言い始め、現在、研究室では間抜けな空気が漂っている。本人が自分のことを教えて欲しいって、どう考えても間抜けだ。しかも記憶喪失でもないのに。 「どうしても思い出せないことがあるんだ。協力してくれ」  そして史晴、こうなることは予測済みだったようで、そう言ってぺこっと頭を下げた。ううむ、何だか新鮮。それは裕和も一緒だったようで苦笑している。
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