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その微妙な差が、神と呼ばれる別次元の誰かを怒らせるのだ。いや、干渉してしまうというべきか。そう、こちらにも干渉できる何かが、怒りに触れるポイントだ。
「そうだな。それこそ鍵なんだろう。その数式を知ってしまうと次元に穴を開けれるようになる。伶人は気付いていなかっただけ、清野は一般解ではなく特殊解だっただけで」
そこで、四人は押し黙った。ここからが危険だという線引きに近づいた。その感触が確かにあったからだ。
「穴を開けられるのは、向こう側からも同じなんだよな。だから、二人の人間が死ぬ結果になった」
「ああ」
裕和の質問に史晴は頷く。つまり、数式そのものを特定した瞬間が最も危ないのだろう。
「虚数解であり、次元の穴か。つまり、次の層は虚数」
「ああ。そうか」
そこで史晴は気付いたようだが、なんせカワウソのままだ。筆記は出来ない。
「先輩、何かに気付いたんですか?」
すかさず美織が助けを出すと
「ああ。悪いけど、ホーキングの出したブラックホールの数式を書いてもらえるか」
と言われた。ここに来てホーキングと思ったが、美織は伶人の論文に関わるようになって暗記してしまった数式を書く。それはホーキング放射と呼ばれている現象を示す数式で、ブラックホールが徐々に質量を失うことを示すものだ。
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