先輩はどきどきカワウソになる!?

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 結局、史晴には全く心当たりがないらしい。打つ手なしだ。しかし、このまま手をこまねいている訳にはいかない。 「原因を探さないと駄目ですよね。やっぱり」  本人は無自覚のまま、それも今ひとつ何も思いつかないまま。これでは先に進まない。カワウソになって売り飛ばされてしまう。  美織は何か手掛かりはないかと探すことにした。女子力を活かせると葉月に太鼓判をもらったことだし、何か出来るはずだ。そこで、何か知っているだろう人に話を聞くのはどうか。まずは史晴をよく知る人を紹介してもらおう。そう思って史晴に提案すると 「そうだな。学部生の頃から仲がいいのは、同じ研究室の酒井かな。他でいうと、隣の研究室の陣内かな」  と、カレーを食べ終えて満足な史晴は教えてくれた。同じ研究室の酒井は美織も知っている。眼鏡を掛けていていかにも理系男子という人物だ。フルネームは酒井裕和。こちらはすぐに話が聞けるだろう。問題は接点のない陣内か。しかし、話を聞かないことには呪われるきっかけさえ掴めない。 「あれこれ話を聞いてみましょう」 「そうだな。若い女に声を掛けられて喜ばない男はいない。椎名、いいところに目を付けたな」  葉月はそう褒めてくれるが、なんか微妙に嬉しくない。史晴はどう思うのだろうと視線を向けたが、ノーリアクションだった。ちょっとは嫉妬して欲しかったなという気持ちは、ぐっと抑え込む。
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