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「いいぜ。お前に頼りにされるのは悪くない」
「そうか」
にやっと笑う裕和に、史晴はほっとしたようだ。突っ込まれて理由を聞かれたらどうしようと緊張していたらしい。
「で、何を忘れているんだ?まさか忘れている内容も忘れているとか」
「そのとおりだ」
「マジか」
冗談のつもりで言ったことに、さらっとそのとおりと頷かれ、裕和は難しいことを言うなと天井を睨む。
「その、占部先輩って完璧すぎるじゃないですか。そのことを恨んでいた人とか、いませんでしたか?」
何か助け船を出さないと。そう思った美織が訊くと、まあ何人かはいたなと頷いた。
「やっぱり」
「本当にいるのか」
納得する美織と違い、納得出来ないと史晴は不平を漏らす。それに、裕和は思いきり苦笑した。
「なるほど。この調子じゃあ色々と忘れていそうだな」
「ということは、恨まれるようなことが多数?」
「ま、恨みってのがどの程度かは解らんけど、占部の才能を羨む奴は一杯いたね。ついでに、そのイケメンである顔とか、すらっと長い脚とか」
「それは――モテたいってやつですね」
「そうそう」
にししっと笑う裕和は楽しそうだが、史晴は非常に理解できないという顔をしている。そういえば、こんなに完璧な外見を持っていながら、史晴が女の子を連れて歩いているところを見たことがなかった。
「それは俺も。だから椎名と一緒にいるってのにビックリだよ。何?付き合ってるの?結婚するんだったら結婚式には呼んでくれよ。親友代表でスピーチするから」
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