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朝の通勤ラッシュの時間帯、駅前の大通りは多くの人々が行き交っている。 赤く色付いたプラタナスの並木、その脇に並ぶコンビニ、ドラッグストア、ファストフード、牛丼チェーン、居酒屋、カフェ。 ありきたりの雑多な都会の街並みが延々と続く道。 そこに、スタイルの良さを見せつけるような薄手のピッタリとした白いハイゲージニットワンピースを着た、一際目立つ女が、赤いピンヒールで足早に歩いていく。 裾だけをカールさせた鎖骨までの栗色の髪、真紅の唇、コーラルピンクのチークをふわりと乗せた白い頬、少し垂れた丸くて大きな瞳、太めに描かれたブラウンの眉等、セックスシンボルそのままの容姿は、大多数の男を惹き付けて離さないだろう。 寿史(ひさし)にとっては『粛清すべきゴミ』でしかないが。 だから迷いは無かった。 邪魔な群衆をかき分け、女の前に回り込むと、そのままハイネックの襟元を左手で強引に掴んだ。 ふわりと漂う、ホワイトムスクの上質な香りと共に、風船のように膨らんだ胸が上下に揺れる。 突然の事に、女は声も出ないようだった。 目を皿のように見開き、眉をぎゅっと寄せ、半口を開けて唇を震わせるように寿史を見ている。 この女をぶっ殺す。 そう思うと、寿史は武者震いがした。 まずは問答無用に右手の拳で思い切り女の顎を殴った。 ギシリという鈍い音と共に、女の口から血飛沫が飛ぶ。 一緒に飛び出た歯の欠片が地面に叩きつけられ、カンッと乾いた音を立てた。 すかさず、もう一発。さらにもう一発。 その度に女の顔からギシリギシリと音がする。 殴り続けると、女の顎が少しずつひしゃげ、真っ白だった肌が内出血を起こし、どす黒く腫れていった。 「汚ねぇ面だな」 原型を留めてない女の顎に唾を吐き掛け、掴んでいた襟元を投げ出すと、代わりに肋骨の辺りに拳を打ち込んだ。 「ゴフッ」 地響きのような呻き声と共に、女は手足の曲がらぬ人形のように四肢を真っ直ぐ前に伸ばしたまま、後方に吹っ飛んだ。 そのまま、オープンカフェの店内に突っ込む。 女がぶつかったテーブルや椅子が派手な音を立てて倒れた。 寿史は騒ぎ立てる客らを押し退け、大股でカフェに入ると、血を流して倒れている女の真横に立った。 テーブルの角で頭でも打ったんだろう。そんな事はどうでも良い。 それよりも。 あの日以降、片時も忘れられない憎しみ。 こんな女の為に弟は……。 恨みを晴らすべく、何度も何度も執拗に女の腹を蹴り続けた。 その都度、女の身体からは吐瀉物や排泄物が飛び散る。 高そうな服と凝ったメイクで取り繕った女は、今や汚物に塗れたバケモノと化していた。 間もなく、派手なサイレン音と共に警察官が駆け付けたが、寿史は全く気付いていなかった。 目の前のバケモノの息の根を止めるのに必死だったのだ。 「バケモノ! 死ねぇ!!!」 叫んだ所で、屈強な警察官に取り押さえられた。
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