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シゲの雑過ぎる解釈に開いた口が塞がらない。
流石に一言、苦情を述べたくなる。
「直ぐに忘れるって言っても、約束を忘れたり、物を失くしたりする事が人より多いだけで、そこまで劇的に忘れる訳じゃないです」
所がシゲの耳には届かなかったらしい。
深く頷いたと思ったら、ビシッと寿史を指差し、断言した。
「奴さん達、オメェが忘れっぽいのをいい事に、都合良く操ろうって魂胆だ」
「ソレ、僕が言おうと思ってたのに……」
いじましく言うレンの言葉を右掌で制し、シゲは続ける。
「オマワリはあの手この手で取り込もうとしてくる。
注意するに越した事はねぇ。
その弁護士の野郎も信用ならんな。
別の弁護士を雇う訳にはいかんのか?」
「私設の弁護士? そんな金、無いですよ。
それに、いくら俺がADHDだからと言って、そんなの現実的じゃない。
俺は疑り深いし、簡単には丸め込まれません」
しかし、シゲもレンも訊く耳を持たない。
「いいや! 絶対にそうだ。そうに決まってる。
とにかくアイツらの言う事を信じるなよ」
「そうですよ。アイツらを信じても裏切られるのがオチだ。
寿史さんは単純だから、直ぐに相手を信じるだろ?
気を付けなよ」
「お前ら、俺の何を知ってんだ!
昨日、会ったばっかりじゃねぇか!!」
思わず声を荒げると、見廻りの警察官から厳重な注意を受けた。
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