13

2/6
前へ
/52ページ
次へ
明くる日、主治医はあっさりと記憶のすり替えの事実を認めた。 「何故そんな事を?」 と身を乗り出す寿史に、主治医は困ったように微笑んだ。 「何故って? 簡単な事だよ。君と私との利害が一致するからだ」 意外な言葉に寿史が首を傾げると、主治医が口を開いた。 「考えてもみてごらん、寿史くん。君は既に、あの男から事実を聞き及んでいるんだろう?」 「あの男?」 「東堂遥の恋人の弁護士さ」 ほんの一瞬、主治医はいつもの温厚な顔を歪ませ、鋭い目で寿史を見据えた。その目線にたじろぎつつも、「何の」と訊くと、主治医は小さくため息を吐いた後、いつもと同じ、目を糸のように細めて微笑んだ。 「君の生い立ちだよ」
/52ページ

最初のコメントを投稿しよう!

26人が本棚に入れています
本棚に追加