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「君はろくでなしの父親と人殺しの母親の間に生まれた、どうしようもない負け犬だ。 育った環境の所為か、酷いトラウマを抱え、適応障害を患っている。 しかも、なまじ高い知能を持っているだけに、人の言葉を忖度して、勝手に傷いて、更に適用障害が酷くなっていく。 我々が君を見つけ出した時には、君は心身共に追い詰められ、自殺する一歩直前の状態だったんだ」 「適応障害? ADHDではなく?」 寿史が訊くと、主治医は頷いた。 「そう、適応障害だ。まあ、元々ADHDも持っているがね。 生きにくい根本原因は適応障害だとわかった。 そもそも君の心は繊細で傷つきやすい。だから、他人のちょっとした一言にも過敏に反応する。 しかも、君の生い立ちを考えてごらん?」 「まあ、色々言われそうですね」 「幼少の頃から、色々では済まない罵詈雑言を受けて来たことは、想像に難くない。他人の口に戸は立てられないからね」 寿史が頷くと、主治医は同情の籠ったような口調で続けた。 「勿論、君も生きていかねばならない。 だから、君の脳は自衛のため、他人の発言を一切シャットアウトするようになったんだ。 その状態がADHDと相まって、他人とのコミュニケーション障害に拍車を掛けた。 そう、根本原因は君の繊細過ぎる心と酷過ぎる環境なんだ。 だから、環境さえ整えれば、君は自ずと他人に心を開き、現在の問題から解放される筈だと我々は考えた。 そこで、治療を行ったんだ」
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