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「治療?」 「そう、治療だ。 君は真っ当な両親から生まれ、幸せな幼少時代を過ごした。 その後、不慮の事故で両親を失ったものの、仲の良い弟と優しい祖母と三人で幸せに暮らしてきた。 こんな生い立ちなら、君のその、蚤の心臓のようなちっぽけな心でも、適応障害を患わずに済むのではないかと思ってね」 「え?」 「約5年の間、少しずつ、本当の記憶を隅に追いやり、偽りの記憶を脳に擦り込むよう、丹念に治療を続けてきたんだ」 それを治療と言い切る主治医の口調にどんどん気分が悪くなっていく。 我慢しきれなくなって声を上げた。 「ちょっと待ってくれ。それは治療ではなく、マインドコントロールではないですか? 俺は、記憶のすり替えなんて、望んだ覚えはない!」 肩を怒らせ立ち上がり、大声を上げる寿史に、見張りの警官が注意を促した。 「止めなさい。でないと、面談を打ち切るぞ」 寿史が渋々座ると、主治医は困ったように微笑んだ。
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