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「一応、説明はしたんだよ。ただ、君が我々の話を理解出来ていたかは不明だがね。当時、君にサインしてもらった承諾書もある。 もし、必要なら、明日持ってくるがね?」 余裕の主治医の口調に、寿史の気分は更に悪くなっていく。 何とか堪えて、首を振った。 「要りません」 すると、主治医は髭を撫でながら頷き、口を開いた。 「そうかね。とにかく君の精神は良好な状態へと推移した。 治療の成果だよ」 何が治療だと思ったが、そんな事を言っても丸め込まれるだけだ。 代わりに、一番訊きたかった事をストレートにぶつけてみる事にした。 「俺が東堂遥を殺すように仕向けたのも、先生が言う治療の一環ですか?」 すると主治医は目を伏せ、首を振った。 「いや、それは違う。 私が作った記憶に、東堂遥は存在していない。 ただ、君と私を引き合わせたのは、他でもない、彼女なんだ。 そして君は、彼女に密かな恋心を抱いていたようだ。 我々が治療で作り出した記憶と本当の記憶が混在して、コントロール不能な状況に陥ったのかも知れない。 その点も鑑みて、今回のことは殺人ではなく、医療事故ということになるらしい。 私は少なくない罰金を払わなければならないだろうし、悪ければ医師免許を剥奪されるかも知れないね」
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