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すると、寿史の耳に、ふと、咎めるような調子の嗄れ声が入ってきた。
「これはどういう事かね。
セロトニン量が異常なのは一目瞭然だろう。
しかもこの日のアドレナリン量、明らかにスパイクを起こしている。
君は今月からM27368の担当だよね。
先週のミーティングで、『異常なし』と報告した理由を説明したまえ」
部下を叱責しているように聞こえる。
しかし、部下の方も負けてはいない。
張りのある艷やかな声で間髪入れずにきっぱりと反論した。
「セロトニン量の平均が先月の10%以下になっているのは、DDの設定に依るものです。
概ね、予測通りに推移している事から、異常なしと報告しました。
アドレナリン量のスパイクについても想定の範囲内です」
その反論が余程奇異だったらしく、嗄れ声は怪訝そうだ。
「DDの設定? 私が先月末にチェックした際はそんな設定になっていなかったがね」
すると、部下も不思議そうだ。
「僕が月初にチェックした時には今の設定でしたよ。
という事は、誰かがその間の期間にデータを入れ替えたんでしょうか?」
「そんな報告は全く聞いていない。
もし、本当にデータが入れ替わったのであれば、重大なインシデントだ。
早急に対処する必要がある。
君、悪いけど、直ぐにシステム管理者に連絡して、M27368のDDを変更した者の足跡が残っていないか、確認してもらってくれ」
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