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「オイ! 起きろよ、起床時間だ」 薬の所為か、泥沼をたゆたうような倦怠感が全身に残る。 重い瞼を半分ほど開けた寿史の視線の先には、呆れたような二人の男の顔があった。 昨日から同室のシゲとレンだ。 「ブタ箱で熟睡とは豪胆だな」 からかうような口調のシゲは六十ニ歳。 結婚詐欺師で保険金目当てに複数の女性を殺したという、ひとでなしだが、年齢の割には色気があり、語り口が優しいので、今も女性達からの差し入れが絶えない。 もう一方のレンは二十六歳の元塾講師。 こちらも何人もの教え子を自宅に連れ込んでシャブ漬けにした挙げ句、ハメ撮りしながら強姦を繰り返していたという、救い難い変態だ。 にも関わらず、外見だけは爽やかで思いやりに溢れたような笑顔を浮かべているものだから、女子中学生がコロリと騙されるのも、ある意味必然なのかも知れない。 寿史にしても、表向きには何の落ち度もない女性を惨殺した凶悪犯なので、お互い様なのだが。 とにかく、同室の二人か喋りやすくて人当たりが良いのが何よりもの救いだ。
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