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#1 玉砕覚悟からの大逆転?
中学校を卒業して、高校に上がる直前の春休み、鏡を見てマジで思ったの。──何これやばい、可愛くならないと死ぬ、って。
お菓子の食べ過ぎと思春期のせいで荒れた肌。受験生だから頭使うんだし仕方ない、って自分を甘やかして好きなだけ食べまくった結果、パンパンになった顔。もっさりとした黒髪。ぼさぼさの眉毛。
全身鏡で見ると、もっとひどい。通学時はジャージで、家ではスウェットばかり着ていたから、どんどん太っていたことに気づかなかった。──体重計に乗ってみたら、前に測ったときよりもプラス5キロ。本気で血の気が引いた。やばい、なんてものじゃない。
鏡をじっと見ていたら泣けてきた。最初はしくしく泣いていたけれど、途中で何かがプツンと切れて、喚くように泣いた。
──こんなんだから、あいつにまともに喋ってもらえなくなっちゃったんだ。そりゃそうだよ。こんなにデブでブサイクなんだもん。
わたしの脳裏には、自分とは真逆の容姿を持つ幼なじみの顔が浮かんでいた。小学生のときから、いや、もはや幼稚園のときから──凛太郎は綺麗だった。色白の肌に色素の薄い瞳、切れ長の涼しげな目、すっと通った鼻筋に薄い唇。「端整な顔立ち」ってああいうことを言うんだと思う。
わたしの顔のパーツは全部丸っこくて、唯一の長所といえばぱっちり二重の目元くらい。親には「凛太郎くんは本当に綺麗な顔してるよね」って小さい頃から何度も言われて、クラスメイトにも「まな、いいなあ。あんなにかっこいい幼なじみがいて」なんて言われて。何もいいことなんてない。むしろ、大嫌いだって思ってた。
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