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小学校高学年になる頃には、女子の話題といえば恋バナばかりだった。そんなときに必ず名前が挙がるのは凛太郎で、その度に胸の奥がきゅっと苦しくなった。
中学校に上がったら、さらに女子たちから一目置かれる存在になってしまって、わたしへの態度がなんとなく冷たくなった。最初は子どもの頃と同じように話しかけていたけれど、冷たくされることに耐えられなくなって、いつしかわたしの方から凛太郎を避けるようになった。
そんな状況なのに、母親から聞いた凛太郎の志望校と同じ高校を目指したのは──心のどこかで、諦めきれていなかったから、なのかもしれない。
凛太郎は頭がいいから、志望校はわたしの学力の数ランク上の高校だった。
負けず嫌いが功を奏したのか、猛勉強の末になんとか合格。同じ高校に受かったことを凛太郎には直接伝えていないけれど、どうせ母親同士で筒抜けだ。──またあいつと一緒かよ、なんて思われているかもしれない。いや、気にも留められていないかも。
*
──ていうか、見れば見るほどやばいんだけど。ねえ、この見た目で、どうして今まで気づかなかったの?わたし、バカなの?……凛太郎と同じ高校に行ける、なんて浮かれている場合じゃない。なんとかしなくちゃ。
わたしがまず手に取ったのはスマホだった。ニュースアプリの広告によく出てくるコスメアプリ、とりあえずあれを落とそう。そして、アカウント登録だけしていたSNSアプリを起動して、アイドルやモデル、おしゃれなインフルエンサーを片っ端からフォローした。
──凛太郎の隣に立っても恥ずかしくないくらい可愛くなるまで、絶対に妥協しない。ダイエットしてメイクを覚えて、努力しまくって誰もがびっくりするくらい可愛くなって、それから……。
わたしは密かにあることを決意した。リミットは高校の卒業式。その日から、わたしの努力と苦悩の日々が始まったのだった。
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