#6 プラチナ・チケット

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凛太郎が差し出してきたのは、さっき悟くんからもらったチケットと同じものだった。 受け取ろうか、それとも、「もう持ってる」って言おうか──考えあぐねていると、「どうしたんだよ。予定入ってるのか?」と凛太郎が不審そうにわたしの顔を覗き込んできた。 「ううん……そうじゃないけど」 ──凛太郎じゃなくて悟にチケットもらうんだなぁ、って。留依さんの鈴を転がしたような可愛らしい声が脳裏に蘇る。今思えば、なんだか棘のある言い方だったよね。もしかしてあの人、見た目どおりの性格じゃなかったりして。 「前島か誰かと来いよ。俺の出番は後のほうだから、オープンから来なくてもいいし」 「……でも」 さっき留依さんと会った後に、悟くんからメッセージが入っていた。「俺、トップバッターだからよろしくね」──わざわざそう言われて、すっぽかすのは感じ悪いよね。 「なんだよ、何かあるなら言えよ」 「えっと……さっき悟くんにばったり会って、チケット、もらったの」 なんとなくばつ(・・)が悪くて、凛太郎から目を逸らして絞り出すように言った。彼は一瞬黙って、「あ、そう」と低く呟く。 「あ、でも……これ、悟くんに返す。わざわざ渡しに来てくれたんでしょ?」 「同じものだからいい。もらったなら先に言えよ」 凛太郎はこれ見よがしに大きなため息をつくと、せっかく出したチケットをポケットにしまい込んでしまった。まずい、これはまたケンカになってしまうかも──そう思ったわたしは凛太郎の腕をぐっと掴んで、「いいから、これ、ちょうだい」と彼の目をまっすぐ見つめた。 「もう持ってるんだろ。だったら……」 「悟くんじゃなくて、凛太郎からもらったチケットがいい」 わたしの言葉に少し目を見開くと、もう一度ため息をついた。そして、隣にドカッと腰を下ろす。 「……まな、あのさ」 「なに?」 「ライブの後、うちに泊まりに来いよ」 えっ、と彼の方を向くと、不機嫌そうな顔で「嫌?」と尋ねられる。嫌なはず、ないじゃない──そんな思いを込めて首を思い切り横に振ると、「おい、首振りすぎ。髪の毛当たったんだけど。これ、凶器か何かなのかよ」と毛先を軽く引っ張られた。
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