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「泊まっても、いいの?」
「いいと思ってなかったら言わないだろ」
そう言った凛太郎の顔は、少し赤くなっていて──もしかして照れてる?そう思うと、その大きな身体にぎゅっと抱きつきたい衝動に駆られた。
照れた顔なんて、ほんの少し前までは見たことがなかったのに。過ごす時間が長くなっていく毎に、密度も少しずつ濃くなっているのかな。
いろんな顔をもっと見たい。ねえ凛太郎、お泊まりしたら、わたしにしか見せない顔も……見せてくれる?
「じゃあ、少しは部屋の掃除しておいてよね。座るところないなんて嫌だからね」
「ベッドに座ればいいだろ」
「ベ、ベッドって……もう、そういうことばかり考えてるの?」
「バカ、んなわけねえだろ。おまえが足の踏み場がないって言うから……」
「言ってないでしょ」
「ああもう、うるせえな。わかったよ、片付けとけばいいんだろ」
凛太郎はフン、と怒ったように顔を逸らしてしまったけれど、そのピアスだらけの耳はほんのりと赤い。そんな姿がどうしようもなく可愛く見えてしまって、わたしは彼の手に自分の手をそっと重ねた。
「……仕方ないから、泊まったときに片付けてあげる。凛太郎も手伝ってよね」
「俺も手伝うのかよ」と口を尖らせたので、「当たり前でしょ。凛太郎の部屋なんだから」と返してやる。しょうがねえな、わかったよ。そう言って頷いた彼の顔は、心なしか少しだけ嬉しそうに見えた。
*
少し折れ曲がった2枚のチケットを手に、わたしはベッドの上を何度もごろごろと往復する。
ダメ元で、「一緒にライブに行こう」ってさゆを誘ってみたら、18時までバイトがあってオープンには間に合わないかもしれないけどそれでもいいなら、と言ってくれた。
オープンは確か17時で、スタートは17時半。スタートにぎりぎり間に合うくらいの時間に行くつもりだ。
──お泊まりってことは……今度こそ、あのときの続きをするんだよね?
どうしよう。ダイエット間に合うかな。スキンケアも強化しなくちゃ。勝負下着と可愛い部屋着は、明日買いに行こう。お気に入りのボディミルクが切れそうだから、それも……。
想像しただけで、胸がはち切れそうなくらいドキドキする。初めて二人で過ごす夜のことを考えていたら、留依さんに言われたことなんて、頭の中からすっかり消し飛んでしまっていた。
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