#2 知らないことばかり

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「嫌に決まってるじゃん。だって、一番理解できないもん。バンドとか音楽とか」 「まなはサークル入らないって言ってたもんね。連休明けからバイト始めるんだっけ?」 「そう、コールセンター。短期で他のバイトもしたいと思ってるんだよね。髪もメイクも自由なバイト、何かないかなぁ」 わたしは、胸の下まである長い髪を指に巻きつけながら言った。サークルには最初から入る気はなく、美容グッズや脱毛サロンに通うお金を稼ぎたい一心で、大学生の間はバイトに明け暮れようと決めていた。 「うーん、短期なら夏のビアガーデンとか?わたしのお姉ちゃん、やったことあるよ。大変みたいだけど」 「昼間は日焼けしそうだなぁ……夜のビアガなら、いいかも」 「まなはテキパキしてるしコミュニケーション能力高いから、向いてるかもしれないね」 さゆのほっそりした白い手首がちらりと見えて、いいなぁ、と思う。わたしも色白な方だけど、さゆはもっと色白なんだもの。顔も可愛いし、細くてちっちゃいし……。 「まな、どうかした?」 「うーん、さゆって本当に可愛いなぁって思って」 元がいい子と努力で何とかしてるわたしみたいな子の間には、越えられない壁がある。さゆといい凛太郎といい──生まれたときから綺麗だっていうのは、なんて羨ましい才能なんだろう。 「なに言ってるの。まなこそ、いつもオシャレで可愛くて羨ましいよ?新作コスメの話、あとで聞かせてね」 「うん。今度はさゆも一緒に見に行こうね」 そう返すと、「デパコスって買ったことないし、行くのちょっと怖いから、まなが案内してね」とさゆが可愛く微笑んでくれる。その笑顔にほっと心が(ほぐ)れて、わたしは「もちろん」と頷いた。
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