とあるふたりの冒涜的な探索録

カプチーノと探索者

ところはM県赤六(あかむ)市。
海に面したM県の中心部から少し離れたところにあるのが、ここ、赤六市だ。
赤六商店街にある花屋『Camomille』の店員がオレ、成瀬浬(なるせ かいり)。
フランスのワンエイスで、顔がいいらしく、店の客にはオレ目当てに花を買いに来る客が一定数いるらしい。つまり店の売り上げにはオレが一役買っていると言っても過言ではない。

バレンタインには女性から毎年大量のチョコが渡されるが……
正直に言って、要らない。
本命…否、恋人は別にいるから。

その人は、斜向かいの喫茶店『ファタリテ』の店員・無量塔直人(むらた なおと)。
マスターが旅好きでちょくちょく色々な場所に行っているから、実質的には直人がマスターのようになっている。
2年くらい前に喫茶『ファタリテ』に勤め始めた青年で、見た目年齢は10代後半。オレから見てもイケメンに部類され、艶のある黒髪で右目を隠しているのが特徴的だ。

晒している左目は綺麗な緋色。
右目も緋色。同じ色なのだから晒せばいいと思うだろうけど、隠している理由はちゃんとある。