占いブームが世界を破壊する(占い事業で巨万の富を得た男の一言が世界を破滅させる)2600字

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1.霊能者相談室  自主退職を余儀なくされた男は、再就職ができず飲み屋でやけ酒を飲んでいた。一生バイトで終わるのかもしれないなら、一度でいいから起業してみたいと男は夢想した。  しかし、男には金も、コネも知識もない。起業など無理な話だとため息をついた。  その晩、夢枕に男の父が現れた。父は起業するなら『故人に関する仕事』がよいと言った。  世の中はスピリチュアルブームで、誰でも将来に不安を抱いている時代だ。  父の『故人に関する仕事』とは、故人が相談にのるという意味だと思った。 その時、東北地方に『イタコ』と呼ばれる口寄せを行う巫女がいることを思い出した。  イタコに相談するには東北まで出向かなければならない。  男は、スマートフォンで霊能者が故人に替わって相談に乗る『霊能者相談室』という事業はどうかと考えた。    男はインターネットで霊能者といわれる人を探し、事業の相談をしたが相手にされなかった。  男は途方にくれて、デパートの中にある占いコーナーに行くと、4人の占い師に次々占ってもらった。  すると、その中の一人が、失業中の男が、亡くなった父の夢で起業するか悩んでいると語った。  男はその占い師が霊的な力があると思い、霊能者として、一緒に仕事をしようと持ちかけた。  占い師は男に自分には霊能力はないと否定したが、条件をいうと渋々了承した。 男はスマートフォンを利用して、霊能者が故人になり替わって相談にのる『霊能者相談室』の企画話を小さな雑誌社数社に売り込んだ。  もちろん掲載してもらう代わりに原稿料を男が支払った。  やがて、SNSで評判を呼び、大手のマスコミが取り上げるようになった。  男は大満足だった。レンタルオフィスで、占い師と2人で始めた事業はマスコミで取り上げられてから、相談が急増したからだ。
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