【優秀作品選出】バケモノと呼ばれた小説家

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 とある地方都市の裏には、無法地帯がある。個人で仲間を集めて創業した、様々な自称金融業者が乱立し、華やかな都市の裏側から、知恵なき人々の金を搾取していく。  その夜も、繁華街の(あや)しく仄暗い(あかり)の影に隠れ、火花を散らす者たちがいた。 「――クソッ! 待てやっ!」  ドスの利いた声で怒鳴り獲物を追いかける屈強な男たち。サングラスにスキンヘッドの男、ライダースジャケットを着た金髪の青年、金色の龍の刺繍がある黒のジャケットを羽織った色黒男と、他にも三人ほど、それぞれが派手な恰好で、まっとうな社会人には見えなかった。 「――うるせえぇっ!」  必死に逃げる二人の青年。一人はフォーマルな雰囲気の紺のビジネススーツを着た男で髪はオールバック。もう一人は、グレーのスーツを着崩し、中には黒と白のストライプのシャツを着た茶髪の青年。   彼らは繁華街から離れ、寂れた商店街を越え、薄暗い路地裏を走り抜けて、とうとう立ち止まった。行き止まりだ。 「ちっ」  茶髪の青年が舌打ちして背後を見やる。  既に追手の六人が追いつき、じわじわと二人へ歩み寄ってきていた。
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