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【1】Clone.
※作中の地名・名称はすべて架空です。事実とは一切の関係はありません
2032年東京
空間認知力が高かった僕は、技術者として戦争に徴兵させられていた。主に、作戦担当だったが戦力が計画に追いつかなくなって計画本部までもが侵攻されていた。逃げだないといけないまでに。
敵は、東京大階層計画に反対する集団でクローンだ。
「急いで治療しないと」
「僕はもういい。無理だってわかっているんだ」
「でも!」
鉄骨で組まれ、天井・床は鉄網で組まれた空間で僕とボクは敵から逃げていた。銃で照準を合わせている中を必死に逃げているのだ。
でも、ボクは今さっき撃たれた。肩や右胸からは深紅の液体が出ている。病院もすぐにはない中で助かるか?といえば、絶望的だといえる。
敵からは何とか逃げ切ったが、ボクはどんどんと状況は悪化しているのは言うまでもない。
「時期に敵だってここに来るんだ。おいていくんだ 本物がいなくなったら、ボクらは生まれないんだ」
近づいてくる銃声に手を震わせながら僕は逃げた。
「ゴメン...」
「戦争が終わったらまた来てよ...」
echo.残響の都市で
作:ysnb
2035.
目が覚めて窓を開ければ生暖かい空気が部屋に入り込んでくる。昔見た映画のワンシーンのようだ。
太陽の日差しを浴びるにはまだまだ時間があるようだが、下に見える道路にはバスが。上に見える高架には鉄道が走っている。上下に高いこの都市(終末都市)には、密度が濃く人々が暮らしている。
高校生になって一人暮らしを始めた僕は、戦争があったことすらも夢だったんじゃないかって思うようになってきてた。
それでも、夢に出てくるあの日の映像で正気に戻るのだった。
「次の夏休みに、ボクに会いでも行こう」
あれから3年が経ち、僕は高校2年生となった。
***
「葉波くん...」
僕が住む家の上層にある高校。教室だ。
授業が終わり帰ろうとしたとき、一人の女子が話しかけてきた。
「君は...誰だっけ?」
「凪葉...凛」
話しかけてきたというのに、彼女は話そうとしない。僕は不思議に思って彼女の顔を覗き込む。
「本当に地下に行くの?」
「そうだよ。それがどうかしたの?」
何かを言いたそうにするけど、迷っているといった表情の彼女だったが 心の用意が整ったのか話始める。
「私はクローンなの。そして、地下にいるのは本物。意思も記憶も同期している。でもね... 私が泣いているの。 最近特にそうなの」
だから...そういうと 私を助けてほしい と言った。
「約束はできない。でも、探しては見るよ だけど、仮に本物が見つかったとして君はどうするの? 本物が2人というのはあり得ないし受け入れられないんだよ」
「それは大丈夫。大丈夫よ」
なぜか、自信を持っている彼女が僕は怖かった。嫌な予感もする。
「何を企んでいるんだ」
「私が私であるための計画よ。気にしないでいいの」
そう言って彼女は走って教室を出ていった。
次の日、学校に行くと僕は教師からの連絡で驚いた。
「隣のクラスの凪葉凛さんがクローンで、昨日 削除されました。君らも悲しんであげてほしい。時代によって作られてしまったんだ。」
クローンには”死”というのは存在しない。ただ、消えて データリストから除かれる。だから、削除というのだ。
昨日の自信の根拠は、クローンである自身が消えることだったのだ。
詳細は教師も知らないらしく聞けなかったけど、噂ではクローン除去薬を自ら摂取したという。劇薬な上に正当な手段では存在しないもので彼女は自身を削除したという...
「葉波?どうした...」
友人が僕を見てそう言った。
「どうもしないさ」
「でも、涙が流れてる」
手を当てると涙があった。それが徐々に流れていた。
友人までもが落ち込んでいるようで 何も言わずに歩いて行った。肩にトンっと手を置いて。
それから夏休みまでの間、僕は一瞬のような気がした。2週間ほどあったテスト期間とテストも気づいたら終わっていた。
***
「じゃぁ気をつけてな」
「行ってくるよ」
僕は、僕が好きなコーラをバックに入れて下層階へ向けて出かけた。
見送りに来た家族と友人たちに手を振りながらエレベーターに乗り込んだ。
夏休みが始まった8月1日。今日から日帰りか1泊して帰ってくる計画だ。
まずは、現在でも普通に生活がある生活圏の最下層へとエレベーターで向かう。
この都市、東京は上空40階層地下20階層がある。現在の生活圏は地上20階層から40階層まででそれ以下は利用していない。 2018年ごろから建築が始まった上部の階層式都市では、管理外のエレベーター含めて数億基もある。
最初のエレベーターは、地上35階層まで行くものだ。
今乗っているエレベーターは20人と車が1台が乗り込める小型のものだ。
病院へ行く様子の老夫婦や会社の外回りのサラリーマン、買い物の帰りの大学生と幅広い。
<まもなく 35階層 です。直通30階層行は、鉄道をご利用ください>
きれいな声のアナウンスが流れ、徐々に減速するエレベーターは静かに止まり扉が開いた。
「久しぶりに来た...」
祖父や祖母が住んでいる階層だ。少し懐かしいテレビコンピュータが喫茶店やコンビニにおいてある。
なつかしさを名残惜しい気持ちがあるが、さらに下層へ行くために鉄道へ乗り換える。
ループ状になっている鉄道は、地上35階層以上では見られなくなった蛍光灯によって車内が照らされている。
乗り込む乗客たちは、それぞれがスマホや本を読みふけり発車を待っていた。
<まもなく 発車します。次は、34階層北です>
各階層を東西南北で停車し、次の階層へと繰り返し30階に行くには30分ほどかかるようだ。ベルが鳴り、発車するとモーターの音とともに暗い空間へと入っていく。
<...なもなく終点 30階層南です。お忘れ物にご注意ください>
「...おっと もう到着なのか」
うたた寝をしている間に終点につくようだった。ここまで来ると乗客は僕以外に数人しかいないようで 空調が効いているようだった。
扉が開くと、少し埃臭いプラットホームがある。
ホームを降りると、改札機がなく駅員が切符を回収していた。
「ありがとうございました。おや?珍しい 若いお客さんは久しぶりだな」
「そうなんですか?」
「そうさ 軍人かシニアの方しか来ないからね いってらっしゃい」
駅員はそう言うと、切符を回収し僕にニコッと微笑んだ。
「地上30階まで来たかー あとはエレベーターで20階層まで行けばいいな」
ここにきてまたエレベーターに乗り込む。だが、駅から出てエレベーター乗り場に行くまでには200メートルもあるらしく長い通路が伸びている。人もまばらで蛍光灯の点滅する光が怖かった。
それでも歩みを進めていくと、まさかの手動式エレベーターが5基並んでいる。時刻は12時だが、稼働しているのは2基だけのようだ。
「このエレベーターは10階層までなの 20階層へ行くなら次の便よ」
エレベーターガールの女性がそう教えてくれた。次の便は...20分後だ。
エレベーターには、よく見ると「最上階」と書かれたインジゲーターがある。ここが最上階だったのはいつだったか忘れたが20年以上前の話だろうからすごいレトロだ。
ベンチがあり腰かけていると、隣におじいちゃんが腰かけた。
「君も次の便に乗るの?」
「そうです」
「戦争があった時私は...って3年前か大して変わらんなぁ」
ハハハと笑うおじいちゃんは、エレベーターを指す。
「戦争がある前は、もっと深くまで行けたんだよ。 戦争がはじまるとエレベーターが21階層で封鎖されたというからね。」
「20階層までじゃないんですね」
「それは、21階層には何もないからって止まらないんだよ」
・・・
「それじゃ 私はここだから」
「さようなら」
23階層でおじいちゃんは降りて行った。エレベーターが動き出すと同時に気持ちなしか空気が重たく感じる。
「20階層にそろそろつくわよ」
「やっとですね」
低速で動いているために、ここまで来るのに10分近くかかっている。エレベーターが静かに止まり扉が開くとそこには簡素なコンビニと「終末レストラン」と書かれたお店と トイレや交番・検問があるだけだった。
ーそうなのクローンの自分を弔いに行くのかい
検問で対応したおじさんは、僕の身分証明書を見ながらそう言った。データベースに残る僕の記録を見て、大変だったなぁと。
検問を超えると、そこからは長い階段が続く。
ボクがいるのは地下5階のはずだ。25階層分も降りるのだ大変だろう。
それでも、ボクへ会いに行く約束を守るために階段を降り進んでいくのだった。
[【1】Clone. 終]
>NEXT: 【2】Underground.
あとがき
葉波みなとは今回、地下のボクへ会いに行くにあたって3日分の非常物資を持っているがそこまで重くない。というのは、近未来の技術の進化のおかげだ。
また、作中にクローンが出ているがあくまでも架空ということは理解してほしいです。フィクションってやつです。
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