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【LAST】echo.
窓から見える景色に僕は、ため息をつく。
「過去の上に積まれた時代それが今」
そんな言葉を誰かが言っていたっけ? その言葉は、この都市に関して言えば物理的にそうなのだ。
時折聞こえるもう一人の声が残響のように聞こえる。
「本物の僕がいないとボクが生まれないんだ」
クローンの自分は消耗品なのだと自分自身で思っていたのだろうか。戦争が残した爪痕が僕の心を今でも揺さぶる。
夏休みが明けてから1週間が経ち、隣のクラスの凪葉凛は今までの凛というよりも姉妹のように接されていた。その状況に彼女自身もいない彼女を思い浮かべているようで楽しそうだった。
時折見せる震える手が気にはなっているが、いたって平和な日常だろう。
それでも、どこかでこの状況に異論を唱えたくなる僕がいる。戦争時にいたたくさんいたクローンは今どうしているのか...と。
***
「みなと君のことが好きなの」
校舎の屋上で彼女はチョコレートを片手にそう言った。
「それは、君がかい?」
風が冷たい。
髪の毛を手でかき分けて彼女は言った。
「どっちもよ」
***
僕のように戦争を知っている人間はそう多くはない。なぜなら、地下で戦争が行われていたから。
でも、
確かにそこには悲しく悲惨なことが起こっていた。それは隠されたわけでもないのに知られることはあまりない。
まるでゲームのようにおこなわれ終わったその戦争に、僕は巻き込まれた。
クローンが敵という設定は何だったのだろうか。
伏線も回収しきれていない小説のように すべてが途切れ途切れで...
それでも、こうして僕は今日もきれいな空を見ている。隣にいる彼女も景色がいいというはずだ。
だけど、最近妙に気になることがあるんだ。
「本当に僕は戦争に巻き込まれていたのか」って
[【LAST】echo. 終]
NEXTあとがき
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