英一とまっくん

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 英一とまっくん

下校をする生徒の流れを逆流し再び正門に着いた俺は 「公立柏原西高等学校」と書かれた石に上り腰かけていた。 ケーはその下で胡坐をかいて、スマホを見ている。 空を見ると少し赤黒く、夕焼けを雨雲が覆いその雲の間から光が 地上へ逃げている。 坂を下る生徒を見ると、赤や黒と様々な色の傘が広がり始めている。 その生徒らが向かっている高井田駅の方へ目をやると1台の車が 凄いスピードで坂を登ってくるのが見えた。 まばらに下る生徒が次々と道の端に逃げ、様々な色の傘が1列になった。 ブゥオオオオオーン。 マフラー音が少しずつ近づいてくる。 ケーはスマホに夢中で車に気づいていない様子だ。 しばらくして車のナンバーが見える距離にまでに近づいた時、助手席の窓から「ういっすぅー!」という声が聞こえた。 その声は車のスピードで坂の下へ流れていく。 「ういー!ういー!」 その声にケーが気づき、返事をする。 まっくんが助手席から身を乗り出し、何故かガッツポーズ見せる。 短髪でツンツンに立たせた髪が風で後ろへ寝ている。 「何でガッツポーズやねん!!」 車は正門の斜め向かいにある3台の自動販売機の前で止まった。 少し強くなった雨が車を濡らし始め、付着した小粒の雨同士がくっついて 大粒に化けている。
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