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制覇ルール
―――三日前―――
「ういー、ういーっす」
放課後の賑やかな廊下で聞き慣れた声が
耳に入った。
3年4組の中江佳祐だ。
「今日も終わったなー、ケー」
ケー。これがコイツのあだ名。けいすけの「け」をとっただけ。楽でいい。
高校1年の時に知り合って、最初はこのあだ名を嫌がってたのだが、
呼ばれるうちに慣れてしまったんだろう。
今は当たり前の様に返事をする。
「まだまだあっついなー」
けーは額から流れる汗を小指で拭った。
コイツは何故か小指で拭う。
それを見て敵対する高校との喧嘩で流す血を
小指で拭っていた場面を思い出した。
「坊主やから涼しいんちゃうんか?」
「坊主関係ないねん。いっその事スキンヘッドにしよかな」
その言葉で、ケーのスキンヘッドを想像して思わず吹き出してしまった。正直、坊主しか似合わない顔だ。いや、厳密に言うと茶髪で坊主しか似合わない顔と言った方がいい。
眉毛も1度剃ったら生えなくなったらしく、細い眉をアイブローで書いている。こんな奴がスキンヘッドにしたら・・・おかしくて仕方がない。
「矢崎は汗かかんなー、髪長いのに」
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