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英一の追いかけ方
河内国分駅はさっきの国豊大橋を川沿いに左折せず、直進しすぐの場所にある。改札口は2Fにあり、大きな歩道橋と繋がっている駅だ。
その歩道橋へ上る階段が河川敷の近くまで伸びている。
俺らは停車させていた車を素通りし、その階段を上った。
タンッ!タンッ!タンッ!!
3人が階段を駆けると、足音とは別にギィン、ギィンと歩道橋全体を鳴らす。
トンッ!タンッ!バチャッ!
所々の水たまりを踏み、水しぶきが上がる音も混ぜながら、
駅の東口へ走った。
駅に入るとすぐある切符売り場を素通りし、改札機の上に飛び乗り走り過ぎた。この時駅員がなにやら怒鳴っていたが何を言っているか分からず、
まっくんが
「親友とお別れやねん!ごめん!」と
訳の分からない事を叫んでいるのはしっかり聞こえた。
そのままの勢いで大阪難波行き(大阪市内)のホームへの階段を下ると、
たった今到着した列車から下車をし階段を上ってくる人達で溢れていた。
「どけ!コラァ!」
英一の叫ぶ声が響く階段。その大声でざわつき、動きが止まる人達を
俺はかき分けながら下りていく。
ホームまでの階段残り10段ぐらいを一気に飛び降りると、
着地した大きな足音が鳴り、続けて2つ大きな足音が響いた。
タァン!! タン!タン!!
その音に続くかの様に
ブシュゥゥー、ザァン。
と閉まった扉に目をやると車内に居る一人の男と目が合った。
その男はTwittenerの画像でみた戸塚では無かったが、
見慣れない学ランに金髪が、今回の件に関係のある奴という事を示している。
そいつは少し笑うと、俺らを指差し周りにいる仲間に気付かせた。
その仲間は俺らを見て、笑いながら扉に寄り挑発をしてきた。
舌を出す奴、鼻の下を伸ばし変顔の奴、睨み付けてくる奴・・・。
「コルアァアア!!」
そいつらへ叫んだ英一は、ゆっくりと走り出す列車を追いかけ始めた。
この時、何か嫌な予感がした。
これと同じような光景を以前も見た事があるからだ。
高2の春だったか、英一と二人で下校中にトラックの運ちゃんと歩道の
ど真ん中で口論になり(赤信号にもかかわらず、堂々と渡った俺と英一が
100悪いのだが)、喧嘩をした事がある。
「しんや、俺にやらしてや。手ぇ出すなよ」
「オオ」
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