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「これは普通やないやろ」
ブタニクンは俺と目が合ったと思うと、直ぐに逸らして逃げる様に走り始めた。
ダンッダンッ!
ブタニクンの重さが廊下の床を叩く。
「おーい全速力かー?それー?」
ケーが大声でブタニクンの背中に向けて言う。すると、さっきよりほんの少しだけ走るスピードが速くなった。
ダッ!ダッ!ダッ!ダッ!
心做しか軽快な走り。
それは長くは続かなかった。
ダッ!ダッ!ドッ!サァー!!
これだけ速く走るのが久し振りだったのだろうか。
足に体がついていかなかったのか
スライディングをする様に仰向けに転んだ。
「ダビッ!」
聞いた事がない声がブタニクンの口から漏れた。
「ははははは!!」
ケーと同時に俺が笑い、廊下にいた他の生徒達の笑いが重なり合い、響く。
次の息を吸う事が出来ないくらい笑い、苦しい。
「むお・・・フン!」
ブタニクンは太っている割にはスッと起き上がり、小走りで何故か廊下の中央階段を通り過ぎ、非常階段から校庭へと降りて行った。
「おいー!何にも非常事態ちゃうぞー!
お前が非常事態なだけやろーーー!」
俺は叫んだ。
「はははは!」
ケーの笑い声がまだ止まらない。
その声のリズムに合わせる様に、少しずつケーと廊下を歩き始めた。
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