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第五話††両親にバレる時……
あの後、午後の二時間を受け、
三人で学校を
出たまではよかったんだけど、
私達はちょっと、油断していたようだ。
〔逢魔時〕に両親と
遭遇するとは思ってもいなかった。
妖怪などに会う時刻とされている
日没直後の時間帯。
この時間帯から明け方までは
人間のふりをしている
天使や妖怪達も
元の姿に戻る。
私達はそんな彼らと
普通に会話をしていた。
しかし、一つ忘れていたんだ……
この時間帯の
ある一定条件が
満たされた時のみ
“普通の人間”にも
妖達の姿が見えることを。
それは、【逢魔時に
能力者と妖(あやかし)が一緒にいること】
つまり、私達と笠巻君が
一緒にいることで
両親にも死神姿の笠巻君が
見えているということになる……
三人で帰っていた私達は
死神姿の彼と普通に会話をしていた。
「螢・茜、
そこにいるのは死神だよな?」
え"……
この声、父さんだよね⁉
その声に茜も笠巻君も気付いた。
母さんは父さんの後ろに隠れている。
あちゃー(焦/汗)
妖達は“普通の人間”にとっては
やはり、畏怖の対象なのか……
私達姉妹にとっては
小さい頃から見えるため、
遊び相手でもあったし、
今では恋人達でもある。
父さんの声を聞いて
笠巻君は茜を私の方に押しやった。
「趣里……」
茜も理由はわかっているのだろうけど
寂しそうな小さな声で笠巻君を呼んだ。
こうなっては隠しきれないだろうね。
『そうだよ。彼は死神だよ。』
だけど、彼は優しく若い死神だ。
茜のクラスメイトで恋人でもある。
「何故、死神と普通に話している?」
怪訝そうな声で父さんは訊いてきた。
『愚問だね。
私達は小さい頃から色んな
妖達と話したり一緒に遊んだり
して来たんだもの、今更、死神くらいで
驚かないし彼が悪いものでは
ないのは話せばわかるわ』
そう確かに、出会った妖怪達が
皆が皆、いい妖怪だったわけじゃない。
中には追いかけて来たり
脅して来たりする妖怪達もいたのも確か。
だけど、兎並は
人と妖が共存している場所だ。
まぁ、そもそも、
人間側が気付かないだけで
妖怪達は人間に紛れて
色んなところにいるんだけどね。
私は茜を笠巻君の方へ
押し返して父さんとの距離を詰めた。
最初は吃驚した。
だけど、あそこは
私達にとってはいい場所だ。
自分達の能力を
隠さなくていいんだから。
ん? この気配、涼音⁉
心配して来てくれたのかな(苦笑)
茜達も気配に気付いたみたいね。
そして、涼音は私と父さんの間に
割り込むように純白の羽を
折り畳みながら空から降りて来た。
「天使?」
父さんの後ろに隠れていた
母さんが呟いた。
『随分前に学校を出たのに
三人の気配が動かないから
心配して見に来たんだが
ちょっと、
厄介なことになってるな』
はい、その通りだよ(苦笑)
『ぁはは、ちょっと、油断しちゃってさ』
両親が帰って来るのは
大抵、夜中に近い時間帯だから
まさか、この時間帯に会うとは
思っても居なかったんだ。
『しかし、何時見ても
涼音の羽は綺麗だよね』
私を背に庇うように
立っている涼音の羽が
間近にあって穢れのない
純白の羽は本当に綺麗だと思う。
『あいつの羽も綺麗だぞ?』
遊馬先生のかぁ~
『見せてくれるかな……』
少し、仲良くなれたとは思うけど
そう簡単に羽を出してくれるかな?
天使にとって羽は大事なものだ。
天界と下界を
行き来することができる
唯一の手段なんだから。
『大丈夫だろう、
頼めば見せてくれるさ』
そんな事を話していたら
遊馬先生の気配が近付いて来た。
『頼む前に見れそうだな(クスッ)』
噂をすれば影とは
こういうことだよね。
「成る程、お前達の気配が
動かなかったのはそういうことか」
ぅゎぁ~
涼音と同じくらい綺麗な羽だ//////
悪魔の漆黒の羽もある意味綺麗だけど
対象的な天使の
純白の羽はもっと綺麗だ。
「新崎達の両親か?」
『そうですよ』
天使や死神と普通に
話す私を見て両親から
怪訝そうな気配が伝わって来た。
さて、どうするかな……
「そうか。
しかし、珍しい偶然が
重なったもんだな」
そう、“珍しい偶然” 。
何時もは笠巻君は
一緒に帰らないし、
両親がこの時間帯に
帰って来ることはない。
ましてや、学校帰りに
会うなんてありえないことだった。
それに、私達と妖達が
一緒にいても“普通の人間”にはわからない。
『本当ですよね(苦笑)
しかし、二人とも心配性ですね』
涼音は彼氏だから
まぁ、わかんなくもないけど
遊馬先生まで来るとは思わなかった(笑)
「この時間帯は
何かと危ないからな……」
なまじ、見える分
狙われやすいのは確かだけど
今日は笠巻君も一緒だし、
逆に見える分、対処しやすいのも確か。
“見える”ことはまさに紙一重だ。
『ありがとうございます』
やっぱり彼は優しい天使だ。
「お前達、今日はさっさと帰れ。
また明日、学校でな」
遊馬先生は一言、
それだけ言うと涼音を連れて
学校へ戻って行った。
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