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音声を上げると、国王である牧が問う声が聞こえてきた。
「りな、どうした?」
「いえ、大したことでは……」
そう答えるりなの表情は硬い。
齢10歳の頃から国の中枢である王閣で仕事をしてきたりなだ。彼のポーカーフェイスは大人顔負けだが、養い親である牧がそれを見破れないわけはない。
「その顔は問題を抱えた顔だ。何だ? 金額が合わないのか?」
正月休み明けから、年末に通った予算案を元に、来年度分として資金を各省庁へと分配する為の作業をしているりなだ。本来なら悩み所など一つもない。
隠しても仕方ないと思ったらしく、りなが逡巡した上で資料片手に席を立った。
「はい、214万程。昨日から少し違和感は感じていたのですが、今日入力し終わってざっと確認したら……」
珍しいことだったから、りなも困惑しているのだろう。
入力ミスかと確認をしたのにも関わらず、発見できなくて困っている、という様子だ。
「審議にかけた時には合っていたんだ。根本が違っているということはないだろうが……。しかし、振り分けられた金額が少ないと、また文句が出るだろうな。とりあえず214万、どこかから調達すべきか」
「ええ、それは出来るものならば……」
りなの頭に、どうやって調達するつもりなのだろう? という疑問符が浮いたのを見て、牧がニヤリと笑う。
「アテがある。心配しなくていいぞ。足らない分はそのままにして、とりあえず先へ進め。りな」
「分かりました。宜しくお願い致します」
そうしてりなは首を傾げながらも、席に戻って作業を続行した。
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