依頼

2/2
前へ
/21ページ
次へ
「それで、何の御用(ごよう)で?」  ボール片手に()いてくる田戸倉部長に、大隅司令官は何事か言いたそうな顔をしたが、ぐっと言葉を飲み込んだ。 「王から、週刊誌(しゅうかんし)に売れそうな未沙姫と架名様のツーショット写真を用意できないか、と連絡があった。出来れば、婚約者同士らしい日常のシーンを」 「……皆で外堀(そとぼり)()めて架名様陥落(かんらく)させよう計画、まだ続行するんすか」  国王である牧の策略(さくりゃく)(はま)って、素直に自分の気持ちを認めて未沙との結婚を承諾(しょうだく)した架名だが、国王になる覚悟は(まった)くと言っていい程ない。権力に興味がないどころか、重荷(おもに)背負(せお)いたくない架名には、そんな覚悟、出来ようはずもなかった。  そんなことを思っていると、大隅司令官が「いや」と否定の言葉を口にする。 「どうも来年度予算の振り分け中に、214万程不足が出ていて、りな様がお悩みになられているらしい。そのうち原因を見つけて来るだろうが、とりあえず今すぐに現金が欲しいから、とのことだ」  娘と養子息子の日常を売っぱらって国庫(こっこ)資金(しきん)調達(ちょうたつ)をしようとする国王。さっきのアテとはこのことだったのかと、田戸倉部長は盗撮盗聴して手に入れていた情報とリンクさせた。 「……お前には愚問(ぐもん)だと思うが、できるか?」 「お望みとあらば。そのくらい、朝飯前ですから」  そうして田戸倉部長は、公儀(こうぎ)に認められた任務として、国庫(こっこ)不足金である214万を調達すべく、超ご機嫌にストーカー行為を加速させた。  自分が満足するようなお宝写真を手に入れる為に!!  いや、間違えた。週刊誌に売れそうなスクープっぽい未沙と架名のラブラブツーショット写真を撮る為に!!
/21ページ

最初のコメントを投稿しよう!

16人が本棚に入れています
本棚に追加