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「それで、何の御用で?」
ボール片手に訊いてくる田戸倉部長に、大隅司令官は何事か言いたそうな顔をしたが、ぐっと言葉を飲み込んだ。
「王から、週刊誌に売れそうな未沙姫と架名様のツーショット写真を用意できないか、と連絡があった。出来れば、婚約者同士らしい日常のシーンを」
「……皆で外堀を埋めて架名様陥落させよう計画、まだ続行するんすか」
国王である牧の策略に嵌って、素直に自分の気持ちを認めて未沙との結婚を承諾した架名だが、国王になる覚悟は全くと言っていい程ない。権力に興味がないどころか、重荷は背負いたくない架名には、そんな覚悟、出来ようはずもなかった。
そんなことを思っていると、大隅司令官が「いや」と否定の言葉を口にする。
「どうも来年度予算の振り分け中に、214万程不足が出ていて、りな様がお悩みになられているらしい。そのうち原因を見つけて来るだろうが、とりあえず今すぐに現金が欲しいから、とのことだ」
娘と養子息子の日常を売っぱらって国庫の資金調達をしようとする国王。さっきのアテとはこのことだったのかと、田戸倉部長は盗撮盗聴して手に入れていた情報とリンクさせた。
「……お前には愚問だと思うが、できるか?」
「お望みとあらば。そのくらい、朝飯前ですから」
そうして田戸倉部長は、公儀に認められた任務として、国庫不足金である214万を調達すべく、超ご機嫌にストーカー行為を加速させた。
自分が満足するようなお宝写真を手に入れる為に!! いや、間違えた。週刊誌に売れそうなスクープっぽい未沙と架名のラブラブツーショット写真を撮る為に!!
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