その風を

1/1
7人が本棚に入れています
本棚に追加
/116ページ

その風を

朝、起きると、シィンとヘインは起きていて、挨拶を交わした。 部屋に戻って着替えると、ちらりと夫妻の寝室に目をやって、ジュールズは、いつか仲間に入る…必ず!と呟く。 鍛練をしようと、裸地(らち)となっている庭に出ると、ミナがいて、軽く驚く。 「おう、早いな」 「ジュールズ、おはよう」 デュッカが放してくれたのかと、うっかり言いそうになって、口を閉じる。 たぶん、まだ?そういう言い方は、しない方がいい。 しゃがんでいたミナは立ち上がって、まだ暗い空を見上げた。 「なんか、ずっと走ってた感じだけど、やっと休めそうだ」 「おう、無理はすんなよ」 「ん。ジュールズも、今日は、休もうねえ」 そう言って、大きく息を吸った。 「したいことがあるから。()()くために。今は、息をつく」 吹く風が、ミナの香りを薄く運んだ。 「ああ、今は」 薄く笑い、それから目を上げて、ジュールズはその風を見る。 「歩き出すためにな」 不敵な笑みが、楽しげな笑声(しょうせい)に変わり、風に乗った。
/116ページ

最初のコメントを投稿しよう!