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ある日、俺は帰りが遅くなり、暗くなった夕方の道を一人で歩いていた。すると、いきなり突風が吹いたかと思うと低いうなり声がして強風があちこちから吹き、身動きが取れなくなった。
どうしようかと慌てたが、恐ろしくて何もできずに立ちすくんでいると、何者かが現れて風を一閃した。体が自由に動かせるようになり、ふと気がつくと地面にへたり込んでいた。
俺はその妙な体験を自分の中だけでは処理し切れなくて、その手の話が好きな先輩につい話してしまった。すると先輩は、馬鹿にするでもなくこの上なく真剣に「それはカマイタチにつかまったんだろ」と言った。
そんな馬鹿げた話、以前なら鼻で笑っていたと思うが、いざ自分が体験してみると信じてくれとしか言いようがない。だっておかしな体験をしたんだから話を真面目に聞いてくれた先輩には感謝する。
だが、先輩にも話してないことがある。
その時現れた何者かのことである。その物は見かけこそ人間だが、獣の耳が生え、大きな尾がついていた。
俺は確かに顔を見た。あれは狐野だった。
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