狐野君はヤバイ

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「おい、ちゃんとやれよ」 放課後の部活。ランニングが終わり体操に入る前、俺はキャプテンにそう言われた。キャプテンは他の者に続けるよう指示をし、俺をグラウンドの脇に呼び寄せた。 「は?」 「最近やる気がないのがバレバレなんだよ。みんなの士気に関わるだろ。どうしたんだよ」 「どうしたって……」 俺は狐野の正体を知ってから、あからさまにやる気をなくしていた。しかし、そんなことは知らない他の部員は、狐野を持ち上げ、毎日ポジティブに練習をしている。 俺は正直、気持ちをどこに持っていけばいいのかよくわからないのだが、そんなことは他の者は知るはずもない。 「うちがいくら上の大会に行けるようになったからって、それぞれの能力がめちゃくちゃ上がったわけじゃない。うちは狐野のチームなんだ。狐野を支える周りの俺らが頑張らないと、狐野だって不安になるだろ? 狐野の足を引っ張るようなことをするべきじゃないだろ」 キャプテンは真剣だった。だが、真剣に話せば話すほど、俺の気持ちは遠のいていった。 「狐野、狐野ってうるせーよ……」 「あ? なんだと!」 「お前ら知らないからそんなくだらねーこと言えるんだよ。あんな化け物をありがたがってなんになるんだよ! あんな奴人間じゃねーんだよ!」 感情に任せて俺はキャプテンに怒鳴りつけたが、その声は練習中の他の奴らの耳にも入ってしまった。部員の動きが止まり、場が静まりかえった。おそらく狐野の耳にも入っただろう。 キャプテンはとがった目を俺に向けていたが、急に目を見開いて俺を見て驚いた。 違う。俺を見たわけではなかった。焦点は俺を通り越して、俺の後ろに立っていた監督に合わせられていた。
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