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そのまま順調にいけば花蜜食人種の相手と番をつくり、一生その番に蜜を与えていけば良いだけだった。
けれど、二種は一般人種よりも数が少なく危急種とされている。そのせいで、そう簡単に番をつくることは難しいのである。
ただいつまでも番をつくらないままでいると、ホルモンバランスが崩れ体調不良に陥り、最悪の場合衰弱死してしまう。そんな恐ろしい状況は避けたいが、番になれるなら相手は誰でも良いというわけでもない。
なぜなら、番は一生を共にする運命共同体であるからだ。
一度、一人の相手と番になると二度と他の相手とは番になることはできず、番の解消もすることができない。番のどちらか一方が亡くなれば、残されたもう一方は衰弱の一途を辿ることになる。
そういう理由があり、誰彼構わず番になりましょうとは言えないのだ。
それから番の契りを結んだ場合、二種の本能が覚醒する。花蜜食人種(花蜜食)は番の蜜を欲するようになり、蜜花人種(蜜花)は番に蜜を与えることが使命となる。
蜜を得た花蜜食は、活力が漲り一般人種よりも秀でた能力を発揮できるようになる。それにより花蜜食は、社会において権力を持つ者がほとんどだ。
一方、蜜を与える蜜花は、活力が漲る番の姿を見ることが何よりも代え難い至福の喜びとなるのだ。
番をつくらず本能が覚醒せずとも、二種は潜在的にそれぞれを求めてしまうから厄介なのだ。
そしてごく稀に番がいない蜜花は、多淫症のような症状を発症してしまう。
―――ぼくは、正にそれだ。
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