分身

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 そんなぼくは、見境なく一般人種とも関係を持ってしまう。と言うより、実際は一般人種としか関係を持ったことがない。  ただ、一般人種はぼくたち二種の存在を知らない。理由は簡単だ。  ぼくたち二種は番をつくらなければ生きてはいけず、番をつくったとしても運命共同体であり命を共にするからだ。  もしも二種の死について知られたとすると、危害を加えられてしまう危険性があるのだ。  だから、ぼくたちは存在を隠しながら生きているのだ。たとえ二種の話をしたところで、一般人種が信じるとは思えないが。  そしてなぜそのような症状が出るかというと、二種における蜜とは(すなわ)ち体液のことを指すからだ。唾液や汗、その他の体液諸々(もろもろ)が蜜となる。  それに加えて男性の蜜花の場合、番をつくることにより妊娠が可能な身体へと変化する。それにより番の種子を欲するようにもなるのだが、そのことも潜在的に意識してしまうようだ。  そういうわけで、誰かに抱かれることで本能が蜜を与えている錯覚に陥るのだろう。抱かれているときは気が紛れ、抱かれた直後は一時的にホルモンバランスが安定し自律神経も安定する。  ただ、そのせいでぼくは淫乱と化していた。  『節操なしの淫乱』  ぼくは関係を持った相手たちに、そう陰で噂をされているのを知っている。でも、それでも誰かに抱かれていないと不安で堪らない。  だから、ぼくは周りに何と言われようと気にしない。それに気にしている暇などないくらいに、抱かれていれば良いのだから―――。
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