課長

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 そして、彼は番のいない花蜜食人種である。  番にするには優良物件だ。  だが、ぼくは彼のことがあまり好きではない。それに、彼もぼくのことをあまり良くは思っていないはずだ。  だから入社してから二年、こんなに近くにいてもどうこうなることはなかった。  ぼくは高卒で、十九歳の年に入社した。  それでも大企業に入社できた理由は、正直に言えばコネだ。両親が二種ということはぼくもそれなりに家柄が良いわけで、加えて二種というだけで優遇されるのだ。  そして今年から課長になった彼とは元々同僚だったわけだが、事務的な会話とビジネス上の交流しかしてこなかった。  彼はぼくの素行に勘付いているはずだが、別段咎めたりはしてこない。蜜花の特性について知っているからだろう。  だが偶に投げられる視線から、彼に良く思われていないことを感じる。  生真面目そうな性格で曲がったことが嫌いそうな彼は、不純な行為を繰り返すぼくを軽蔑しているのだろう。  きっと、彼は純情で清らかな蜜花を番に選ぶに違いない。  いくら蜜花の特性とはいえ、ふしだらで淫乱なぼくはこの先も彼とはどうこうなることはない。それに、特性のせいで発症してしまう症状を軽蔑して受け容れてくれないような人は、ぼくの方も願い下げだ。  それから、何事も無かったかのように残業に戻った。仕事を終えたのはそれから暫く経ってからだった。  そこまで仕事が残っていたわけではないのだから、長々と残業なんてするなと言われてしまいそうだ。しかも、残業時間の半分くらいはセックスをしていたのだから。
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