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ぼくは二種の判定前から可愛いと言われていて、蜜花と判定されたときは皆口を揃えて納得していた。
皆んなに可愛がられてきたぼくは、大人になった今もこうして溺愛されているのだ。だがいい加減、うんざりしている。
父はぼくの症状を理解はしてくれているけれど、不特定多数と関係を持つことは許してくれない。そうは言っても、ぼくは複数人と関係を持っている。
父にバレたら家に閉じ込められるだろう。
「今日はどうだった?」
ロールキャベツを食べながら、ぼくの向かいに座っている母に視線を上げた。
「…ん…、普通」
母の隣に座った父が、食事をするぼくをアホみたいな顔でジッと見つめている。まるで小さな子供を見守る様な視線にうんざりする。
「父さん、うざい」
そう言ってやれば、父はショックを受けたように項垂れた。
そんな父を、母も呆れたように横目にしている。ぼくと母は顔を見合わせると、小さく溜息を吐いたのだった。
「最近、いい人いないの?」
母の言葉に、父が勢いよく顔を上げた。
「べつに、いないよ」
番のいない花蜜食と、そこら中で出逢えるわけがない。現に、身近にいるのは課長くらいだ。
「そう――。ねえ、お見合いしてみない?」
ぼくは箸を止めずに、少し考えた。それから、母の提案に首を縦に振った。
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