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「本当にっ? お見合いする!?」
ぼくの反応が意外だったのか母は驚きながらも、ぼくが頷いたことに喜んでいる。
父が何か言っていたが、ぼくたちは無視してお見合いの話を進めたのだった。
今までもお見合いの話はあることにはあったが、聞き流していた。けれど、お見合いをしたくないわけではない。
早く番をつくりたいとも思う。
番をつくらないまま生きていくことはできないし、待っているだけではいつまで経っても番をつくる機会はやってこない。
「じゃあ、お見合いを進めるってことで、先方にも伝えておくね」
「うん。――その人、イケメン?」
花蜜食は皆眉目秀麗だけれど、一応気になってしまう。
「うん! 超絶美形だし、すごく素敵な人だよ」
「超絶美形って、なにそれ。なんか、胡散臭いんだけど……」
見合い相手は、母の知り合いの息子らしい。
年齢は二十五歳で、職業は医者だという。まだ研修医らしいが。
「二人ともっ、父さんを無視しないで! ねえ! 月依がお見合いとか、父さん泣いちゃうからね!?」
「うざい――」
父はぼくのお見合いに反対するが、そもそも番をつくらないと生きていけないのだから仕方あるまい。
嫌だと騒いでいる父を無視して、ぼくは残りのご飯をかき込んだ。
父がこの様子だと、兄もお見合いに悉く反対してくるのだろう。想像するだけで、うんざりする。
だが、ぼくにだっていつかは番をつくるときがくるのだ。
しかしまだ見ぬ未来の番を想像しようにも、自分に番ができる気配すらしない。偶にこうして、一抹の不安に駆られるのだ。
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