写真を見せる老人

2/4
0人が本棚に入れています
本棚に追加
/4ページ
「さて、どうだったかな?つかの間の夢は」  夢・・・だったのか。今のはやっぱり。 「いい歳こいたおっさんに、あまり変な希望を持たせないで下さい」 「そうか?俺からしたらお前なんかまだまだヒヨっ子だがな」 「あなたから見たらそうでも、世間的にはもう立派な大人なんです!いや、立派ではないですけども」 「いや、立派だろうさ。こんな夜遅くまで、頑張って働いとるんだから」  言われて公園の時計を見たら、時刻は深夜の0時になろうとしている。まぁ、頑張ったと言えばそうなのかもしれない。 「そんなお前に束の間のドリームタイムだ。ほれ、もう1枚」  写真をペラペラと、扇ぐようにして渡してくる老人。正直、さっき死ぬかと思っただけに、あまり乗り気がしない。 「ちなみにな。この写真には見た者が確実に幸せになれるという効果がある。これは本当だ」  その言葉を老人が言い終わるより早く、俺は写真を手に取っていた。その力が本当かは知らないけど、藁にもすがる思いというやつだ。  そうして、またさっきみたく一時的な夢が訪れる。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  今度は家の近所などではなく、どこかのテーマパークだった。  2人、手を繋ぎ並んで歩く。  様々なアトラクションに乗って、パレードも楽しんで、締めに花火を見た。  そして、その花火の最中に突然、自分の身体が勝手に動き地面に片膝をついた。  不思議そうにこちらを見る彼女。その彼女に、ポケットから取り出した小さな箱を両手で、大事そうに差し出す。  その時に口も動いていたが、何を言ったかは分からない。分からないけど、そんな事はどうでもいい。  彼女の心底幸せそうな顔を見て、そう思った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「ふっ・・・」  いくら2度目でも、急に起こされるのは慣れない。思わず短くではあるが息を吐いた。  これは、フリーフォールで今まさしく落ちた時のような感覚だ。決して遊園地の夢を見たから、そう例えたわけではない。 「たまにはこういうのも悪くなかろう?」  変わらずブルーシートの上に座る老人が尋ねてくる。そしてまた感じる謎の違和感。 「悪くはないですけど・・・こんな夢を見たところで本当に幸せになれるんですか?」
/4ページ

最初のコメントを投稿しよう!