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「さて、どうだったかな?つかの間の夢は」
夢・・・だったのか。今のはやっぱり。
「いい歳こいたおっさんに、あまり変な希望を持たせないで下さい」
「そうか?俺からしたらお前なんかまだまだヒヨっ子だがな」
「あなたから見たらそうでも、世間的にはもう立派な大人なんです!いや、立派ではないですけども」
「いや、立派だろうさ。こんな夜遅くまで、頑張って働いとるんだから」
言われて公園の時計を見たら、時刻は深夜の0時になろうとしている。まぁ、頑張ったと言えばそうなのかもしれない。
「そんなお前に束の間のドリームタイムだ。ほれ、もう1枚」
写真をペラペラと、扇ぐようにして渡してくる老人。正直、さっき死ぬかと思っただけに、あまり乗り気がしない。
「ちなみにな。この写真には見た者が確実に幸せになれるという効果がある。これは本当だ」
その言葉を老人が言い終わるより早く、俺は写真を手に取っていた。その力が本当かは知らないけど、藁にもすがる思いというやつだ。
そうして、またさっきみたく一時的な夢が訪れる。
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今度は家の近所などではなく、どこかのテーマパークだった。
2人、手を繋ぎ並んで歩く。
様々なアトラクションに乗って、パレードも楽しんで、締めに花火を見た。
そして、その花火の最中に突然、自分の身体が勝手に動き地面に片膝をついた。
不思議そうにこちらを見る彼女。その彼女に、ポケットから取り出した小さな箱を両手で、大事そうに差し出す。
その時に口も動いていたが、何を言ったかは分からない。分からないけど、そんな事はどうでもいい。
彼女の心底幸せそうな顔を見て、そう思った。
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「ふっ・・・」
いくら2度目でも、急に起こされるのは慣れない。思わず短くではあるが息を吐いた。
これは、フリーフォールで今まさしく落ちた時のような感覚だ。決して遊園地の夢を見たから、そう例えたわけではない。
「たまにはこういうのも悪くなかろう?」
変わらずブルーシートの上に座る老人が尋ねてくる。そしてまた感じる謎の違和感。
「悪くはないですけど・・・こんな夢を見たところで本当に幸せになれるんですか?」
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