写真を見せる老人

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「あぁ、なれるさ。俺が保証する」 「なんでそんな確信が持てるんです?これって種も仕掛けもない普通の写真なんでしょ?」 「あぁ、そうだ」  と老人は言ってはいるが、触る度に変な夢を見させられる写真を、普通とは言わない気がするのだが。 「なんで俺が、こんなにも自信を持ってるかは。そうさなぁ〜・・・あと2、3枚くらい。触ってみれば分かるんじゃないか」  そう言って、また手元に置いてあった写真をこちらに渡してくる老人。  俺も今度は普通にそれを受け取った。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー  夢の世界で目を開けると、そこは今現在の俺がいる公園だった。  そして目の前にいるのは小学生くらいの男の子。  2人の手に嵌めてあるグローブを見て察するに、キャッチボールの最中なのだろう。  ボールと言葉を何度も何度も互いに送り合う。  きっと交わしている言葉自体はたわいないとこで、あまり意味もないのだろう。  でも、こんな時間ですらも、自分にとっては至福のひとときだったに違いない。 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー 「今回は短かったな」  これまでと違って体感時間が短かった分、起きる時の驚きもそんなになかった。 「そうか。もしかすると、もう時間がないのかもしれん」  ここで初めて老人が顎に手をやり、考えるような仕草をした。帽子の向こうではきっと難しそうな表情をしていることだろう。  いや、待てよ?老人? 「えっ、若い?」  ここで、さっき感じた違和感の正体に気づいた。  目の前のこの男。出会った時より若返ってやがる。  さっきまで嗄れていた声は、潤いを取り戻していて、白髪だったはずの髪の毛も黒く、艶のあるものとなっていた。顔を隠すように被っていた帽子の下から僅かに見えていた口元の皺も、元からなかったかのようになっている。  これは一体、どういうことなんだ? 「おっと、いかんいかん。遠回りしすぎて、危うく本来の目的を果たせずに終わってしまうところだったわい」  男はまだ老人みたいな喋り方を続けているが、もうその面影はない。ただの老人の真似をした若者だ。
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