王様の花嫁

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 時に、二人を隔てた一筋の沈黙。準備万端になって、ぶつけるだけぶつけて、どちらともなくこつんと額を合わせクスクスと吐息を散らす。 「おいイジメか。無理させらんねー身体で全力で煽ってんじゃねーぞ」 「うん。暫くはほどほどにしとこうね」  新しい命がここに宿ってくれている以上、きっと今までの私たちらしくとはいかないことも多いのだろう。  恋をするために生まれてきた私がたったひとつ望んだ恋。それは大輪の華を咲かせたのだから。  ただ知っていて欲しかった、知りたかった──生涯のうちたった六十日会えないだけで容易く欲情が振り切れるほどに欲しがってしまうのだと。 「風呂行くか。洗ってやる」  そうして入浴後ドライヤーをかけてくれたのだが、私の髪が長すぎるせいかびっくりするほど下手くそで、お陰で幽霊スタイルになった。廉でも苦手なこともあるのかと思わず笑ってしまう。 「明日役所行こうな」 「うん。あ、でも」 「証人の欄には親父と市井社長がサイン済」  ──手際の良さ。 「ね。気づいてた? 結婚したら同姓同名になっちゃうの。漢字は違うけど。役所で名前呼ばれたら二人で返事しちゃうね」 「最高。まさに二人で一つ」 「え?」 「そういうのをベターハーフっていうらしい」  ──知ってる!  なんて、他愛ない会話をしながら一晩中くっついていた。あなたがソファに腰掛ければ横に座るし、歯磨きも洗面台に並んで一緒に。ベッドに転がると一目散に腕の中に飛び込んだ。  正直自分がここまで甘えん坊だとは思わなかった。だけど全て受け止めてまるっと包んでくれると解っているからやめられない。 「俺と恋の子か。最高の遺伝子だな」 「自分でいう」 「男か女かわかるのいつ?」 「んーどうかな。まだ全然先じゃないかな」  たまに確認するみたいに私のお腹に触れる。まだ目に見えないくらい小さいだろうに。 「でもなんとなく……」 「俺もそんな気がしてる。二人で守っていくぞ」 「──っ、うん。うん!」  だけどこの先いつの時も覚えていて、忘れないで。私きっといつまでも王様に恋してる──。 「ねえ。廉……」 「あいしてる」 「知ってるーっ!」
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