俺は『バケモノ』でよかった

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 モンスター達の前に男は立つ。  数は先ほどの三倍以上か。  ゴブリン、オーガ、名も知らぬ四足歩行の魔獣……。 『バケモノ』と形容されるに相応しい面々だった。 「キサマ……。リュウジン、カ」  リーダーであろうオーガの一人が、片言で問いかけて来た。 「ナゼ、ニンゲンノ、ミカタヲ、スル?」  何故、男は一瞬考える。  俺が本当は人間だから?  あのような少女を守りたいから?  モンスターが憎いから?  違うな。 「俺自身の為だ」  男は剣を構える。  同時に、体の奥底で血が沸き立つような感覚があった。  これだ。  この瞬間の為に俺は生きている。  衝動に身を任せて男は地面を蹴った。  一瞬で距離を詰め、ゴブリンが棍棒を構えるより早く剣を振り抜く。  ゴブリンは一撃で死体に変わり果てる。  肉を断ち、骨を砕く感触。  散々『バケモノ』だと言われてきたが、一度だってこの姿が嫌だと思ったことはなかった。  己に『バケモノ』の力があるからこそ、今まで生きている。  そして何より。  戦うことは、楽しかった。 「キサマ……!」  モンスター達が一斉に構え、男に襲い掛かる。  噛みつこうとする魔獣の牙を紙一重でかわす。同時に振り上げた剣が魔獣の首を斬り落とした。 「さあ、バケモノ同士、殺し合おうじゃないか」  心底(たの)しそうに、男は笑った。
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