0人が本棚に入れています
本棚に追加
モンスター達の前に男は立つ。
数は先ほどの三倍以上か。
ゴブリン、オーガ、名も知らぬ四足歩行の魔獣……。
『バケモノ』と形容されるに相応しい面々だった。
「キサマ……。リュウジン、カ」
リーダーであろうオーガの一人が、片言で問いかけて来た。
「ナゼ、ニンゲンノ、ミカタヲ、スル?」
何故、男は一瞬考える。
俺が本当は人間だから?
あのような少女を守りたいから?
モンスターが憎いから?
違うな。
「俺自身の為だ」
男は剣を構える。
同時に、体の奥底で血が沸き立つような感覚があった。
これだ。
この瞬間の為に俺は生きている。
衝動に身を任せて男は地面を蹴った。
一瞬で距離を詰め、ゴブリンが棍棒を構えるより早く剣を振り抜く。
ゴブリンは一撃で死体に変わり果てる。
肉を断ち、骨を砕く感触。
散々『バケモノ』だと言われてきたが、一度だってこの姿が嫌だと思ったことはなかった。
己に『バケモノ』の力があるからこそ、今まで生きている。
そして何より。
戦うことは、楽しかった。
「キサマ……!」
モンスター達が一斉に構え、男に襲い掛かる。
噛みつこうとする魔獣の牙を紙一重でかわす。同時に振り上げた剣が魔獣の首を斬り落とした。
「さあ、バケモノ同士、殺し合おうじゃないか」
心底愉しそうに、男は笑った。
最初のコメントを投稿しよう!