3.猫またと化け猫

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『猫また。こうなったら正々堂々とダンスで決着をつけるにゃ』 『なぜ』 『何でもいいにゃ。ダンスなら負けないにゃ』  食事を終えた猫または、目を細くしました。猫または化け猫のことなど相手にしていなかったのです。何せ、化け猫は人間たちにこびへつらっている有様ですから。 『おまえの踊りはクネクネして気味が悪い』  猫またが言うと、化け猫はフンと鼻を鳴らしました。 『そっちこそ、ドタバタして優雅じゃないくせに。二流だにゃ』 『何?』  安い挑発でしたが、猫または穏やかではありませんでした。踊りは猫またの一番得意なことだったからです。  当然、言い争いになりました。化け猫は化け猫で一歩も譲りません。テクニックやらレパートリーやらをお互いに主張してみてもどうにもなりません。もう実演しかないと、猫または頭にかぶる赤い手ぬぐいを取りに行きかけました。 「ハハハ。よく分かんないけど、二人って仲いいねー」  青年のお気楽な言葉に、猫またと化け猫は彼を振り返りました。 『……この人間食っていい? 顔がムカつくにゃ』 『これはオレの獲物だ』  猫またが目をランランとさせると、化け猫はビクリとしました。腹ぺこでなければ負ける気はしません。  が。 『お兄さーん。猫またがいじめるにゃー』  化け猫が青年にすり寄ります。やれやれ、と猫または思いました。化け猫の猫かぶりにだけは勝てそうにありません。  青年はまんざらでもない様子で、普通の三毛猫そっくりの化け猫を優しくなでるのでした。  
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