妖間と夢

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 ビクンと体に悪寒が走る。  目の前にはモノクロの世界の夢が浮かび上がる。  ここはどこだろう。  道路の真ん中に立っている。  そこはよく見れば見慣れた風景だ。  道路の左右には木々が生茂り、スピード出し過ぎ注意と掲げられた看板が見える。  家から500mほど離れた場所だ。  新緑に萌ゆる美しい自然が白黒に見えれば、それだけで少女の恐怖心を煽るのだが、この夢は8ミリフィルムで撮った映像のように、カッカッカと進んでいくのだ。  音声も全く聞こえてこない。  道路に点が現れると、どんどんとこちらに近づいてくる。 『近づいてこないで!』  少女は心の中で叫ぶ。声は決して出ない。  見たくはない。この続きを見たくはないのだ。必死に目を瞑りたいが、夢である。映像が終わる事はない。
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