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それから、女性の命に関わる大事な経験をし、無事我が子と対面する事ができた。
だが、ここで終わるわけではなかった。
5日間の入院の後、実家へと帰る。
それは真昼間の出来事だった。愛する我が子に乳を上げ、寝付かせると自分もしばしの休憩だ。
薄い眠りへとつく。ただ目を閉じて横になっているだけ。
——うあ゛ー——
天井から突如として聞こえてきた呻き声に驚く。それは我が子が眠る天井からだった。
急ぎ眠る子を抱き抱え、居間で休んでいる母の元へと向かった。
「お母さん、今天井から呻き声がしたの」
「何言ってるの。風の音じゃない? 母親にもなってー」
母は笑っているが、冗談ではなく聞こえたのだ。
後日また聞こえた。そして足音やラップ音も聞こえる。
古い家屋だ。ラップ音は仕方がないとして、足音は説明がつかない。
母に訴えても、笑ってまだ怖がりなのねですまされてしまった。
どうしようもない恐怖心を、気のせいと思い2週間過ごした。
だが、またあの夢を見た。モノクロの世界へと入っていけば、次の週末には予定を変更して夫へと迎えにきてもらい、その洋間から離れた。
温かい家族と離れて、少し心寂しくも思い涙をしたが、決心は揺るがなかった。
ここにいては喰われてしまう。その恐怖心から逃れるため、自分の家へと帰った。
それが功をそうしたのかはわからない。
家から離れれば恐ろしい夢や気のせいだと言われた音も聞こえなくなった。
愛しい我が子はスクスク育ち、今では赤いランドセルを背負って、元気に登校している。
女性は実家に帰る時には必ず今でも愛娘に伝えている。
あの洋間に行ってはならない……と。
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