ニコチン

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「今日はありがとう」 「こちらこそ、ありがとうございました」 「また飲みに行こうね」 「機会があれば、お願いします」  きっぱり拒絶できない自分に失望しつつ、高杉さんと別れて改札をくぐった。  ケータイが小さく震える。また、謙也からの連絡だった。 「急なんだけど、明日大学時代の友達と釣りに行くことになったから、先に寝てるね」  あらら。明日は、二人で進めていたホラーゲームの続きをやろうと思っていたのに。謙也がいない休日なんて久しぶり過ぎて、何をどうしたらいいのか全然わからない。  困ったな。  そう思った途端、すとん、と何かが腑に落ちたような気がした。  煙草は生活の一部で、無いと落ち着かない、と言った高杉さんの言葉が再生される。  そっか、そういうことなんだ。  私は改札を飛び出して、さっき別れたばかりの高杉さんを探した。  駅から数十メートルのところに、黒いコートの後姿。良かった、まだ近くにいた。  私は高杉さんの背中めがけて、大声で呼びかける。 「あのっ! 告白の返事、今しますっ!」  高杉さんが面食らった表情でゆっくりとこちらを振り返った。  中途半端が嫌いだと言ったのは高杉さんだ。私にできるせめてもの義理立ては、結論を先延ばしにしないことだけだった。  イエスか、ノーか。  大きく息を吸い込み、そして私は叫んだ。
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