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「イエスかノーで答えてよ。俺の彼女になって?」
中途半端が嫌いだという高杉さんは、ウイスキーストレートのグラスを軽くあおり、隣に座る私を長し目で見据えた。
その仕草があまりにも様になっていたから、私は思わず目眩がした。
「……さっき話したとおり、私今、彼氏がいるんです」
一瞬言い淀んだ後、私は曖昧に断りの台詞を口にした。
沈黙。店内BGMのオシャレなトランペットが、やたら大きく聞こえて煩わしい。
「そんなひどい彼氏さんより、俺の方が絶対、奏さんの事幸せにできると思うけどな」
少しの間の後、拗ねたように言う高杉さん。
さっきまで散々彼氏の愚痴を言っていたのは私だけど、そこまで言われるとちょっとカチンときてしまう。
まぁ確かに、一流商社の若手エース様と比べれば、稼ぎは少ないかもしれないけれど。ついでに顔もほんのちょっと、というかだいぶ、負けているかもしれないけれど。
あれはあれで、ちょっとは良いところもあるのだ。
「とにかく俺はこれからも、奏さんに振り向いてもらえるように頑張るから。勝手に努力するのは自由でしょ?」
「まぁ、そうです、かね」
はっきりと否定することができず、なんとなくその提案を受け入れるような形になってしまった。
ドキドキとうるさい心臓ごと飲み干すように、私はグラス半分ほど残ったサングリアを一気に喉奥へと流し込んだ。
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