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「安永さん、検査の結果ですけど」 「あ、はい」  見せられた表には数字と赤ペンでマークが入っている。意味不明すぎて目を逸らしたい。 「以前にもお話しさせて頂いてると思うんですけど」 「あー、すいません。かなり忘れました」 「えーっと…あ、5年前ですもんね」  多分、これが1年前でも俺は忘れているに違いない。脳が保存を拒否している。 「この数字が歯周ポケットの深さで、3ミリまでは大丈夫なんですけど…」  彼女はボールペンの先で、4、とか5、とか6、とか書いてある部分を指し示す。 「上の歯全体と、右下の奥歯と、あとこことここが深くなってて…」  ちょっと、5と6が多いな。3までがOKってことは、アウトってことか。椅子の横に置いてあるタブレットの画面に、レントゲン写真が表示された。 「レントゲンだと、この辺りと、ここ。5年前が…」  もう一枚、隣に表示される。 「これなんですけど、またちょっと歯を支える骨が減っちゃってます」 「減っちゃいましたか…」 「減っちゃいましたね」  言われたところを見ると、確かに画像がちょっと変化してる。素人目にも、そりゃ良くねぇんじゃないかって気が何となくする。 「それと、出血が赤い印。この辺りとこの辺り。炎症があると出血するんです」  多いな。7割くらい赤くマークされてる。出血だもんな。血が出てるんだもんな。ダメだよなそりゃ。 「ハミガキはそんなに悪くなさそうですけど、歯間ブラシはされてます?」 「やってるような…やってないような…」  やってない。前に教えてもらったってことは覚えてるし、暫くはやってたけど、やってない。 「たまにって感じですか」 「たまにって感じです」  いやこれ、絶対やってないのバレてるだろ。俺、めちゃめちゃ気を遣われてるぞ。 「やって下さいね。使い方は大丈夫ですか? お困りのことはないですか?」 「覚えてます」  覚えてますとか言っちゃったよ。完全にやってないヤツの返答だよ。でも、本当に覚えてるから。簡単だから。  彼女はタブレットをスクロールして、以前の記載を確認する。 「3Sかぁ…後でサイズ確認しますね」  …サイズとかあったっけ。 「あと、おタバコ吸われますよね?」 「吸いますね」 「一日何本くらいですか?」 「一箱…多い時は一箱半くらいかな…」
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