受け取り

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スマホをだらだらとスクロールする。もう、楽しさは無い。一つの作業と化している。馬鹿らしいとは思わない。学生の頃からそんなもんだ。周りも、自分も。テレビからは複数の笑い声が聞こえてくる。スマホだけを見ているから何の番組かは分からない。テレビはこの部屋の中では意味を持たない。だが、必要ではある。テレビが点いているという事実が必要なのだ。何故か。そんなこと考えるくらいなら、スマホを優先する。ピーンポーン。『Uber the Eats』が来た。頼んでから20分まあ妥当な時間か。ソファーから抜け出し、暖房の力及ばぬ廊下に出る。鳥肌が立つ。今年の冬は一段と寒い。気がする。ぺたぺた、ぺたぺた。フローリングの床に、皮膚が張り付いては剥がされる音がする。ようやく玄関にたどり着いた。ピーンポーン。催促が追加される。ガチャリ「はーい」扉の外には、『Uber the Eats』独特のリュックを背負った男が立っていた。
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